推定少女

マルチエンディングになったというので、昔読んだ時の意味不明感がどうなったのかと思って読んでみた。
果たしてファミ通編集部に変更を命ぜられたという元のエンディングはどうだったのか、その真相や如何に……?
中盤まではこの先どうなるんだっけ、と楽しみながら読めました。流石にいろいろ忘れて
るなぁ。


と、その前に本編の感想も。
少女期のぐるぐるな感情が描かれていて、やっぱり桜庭一樹だな、と思う。
少女には向かない職業」「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」そして「推定少女
どうしようもない閉塞感の中で、ちょっと逸脱してしまう物語。
最近のは淡々としたやつよりは好きかも。
青年のための読書クラブ」は、両方の長所を取り入れたような印象で割と好きなんだけど、難を言えば、無難すぎる。


誰も自分を理解してくれない、こっそり見に行った母親ですら……。
逃亡中にダストシュートの中で少女を見つけ、名前がないというその少女に白雪という名を与え、そのまま一緒に逃亡開始。少女二人のよくわからない逃亡。

「な、な、泣いてないもん」
「じゃあこれはなに?」
「ゆ、雪。溶けた雪」

白雪という名を意識してかしないでか、泣きながらよくそんな素敵な言い訳を思いつくものだと感心します。ああ、言われてみれば、確かに初雪の一部が溶けたんだなぁ、と。


……ちがうよ!ぜんぜんちがう!
ストーリィが気に入らないのはその分岐点より前!ずっと前から!

SF化するのは構いませんよ。ってか、超常的な何かを使わなきゃ説明できなさげな雰囲気は確かに最初からありました。
でもあのスライムだけは唐突すぎでしょう?
驚きの急展開というより投げ遣り超展開。
遠子先輩に食べさせて感想聞きたいくらいだわ。
ついでに秋葉原の街中でデザートイーグル乱射って、いくらなんでも無茶しすぎ。


それでも書き直し前のバージョンが一番しっくり来るのは、流石に作者がそこを目指してたってことなんでしょう。
あんまり良い終わりかたとも思えないけど、あとの2つを見た後では悪くない気がしてくる。
書き直しのファミ通版とその修正版は、どっちも好きになれない。
虚実入り交じったわけわからん展開なのが悪いんじゃなくて、義父の怪我を夢にしてしまうっていうのは、かなり反則。そこだけは解決して帰ってほしかったのに。

推定少女 (角川文庫)

推定少女 (角川文庫)

とにかくカタルシスが欠乏している。
せっかく膨らませた風船の空気が抜けていくかのような虚しさ。