カッティング 〜Case of Mio〜

「……あなた、気障って言われない?」
「幸いなことに、まだ言われたことはないね」
「そう。なら言ってあげる。あなた、気障だわ」
 ミオは呆れた様な苦笑を浮かべた。彼女はそれに気付き、慌てて表情を打ち消す。

リスカ少女の表紙が眩しいラブ話。「ああ初々しいなあもう」と頬を緩ませながら読みました。自分の内面と外面の乖離に違和感を覚えるカズヤと、自傷癖がありそれを隠そうともしない美少女ミオ。どちらも落ち着いているためか、恋愛主軸なラノベにありがちなラブコメ的お約束な失敗譚が無いというのは魅力です。ステレオタイプじゃないキャラクタにリアリティがあって共感できるとでも言いましょうか。それ故にミオの語尾に「だわ」や「わね」をつけるのが目立ってしまってちょっと微妙。
とはいえ、面白かったのは事実。

カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)

カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)

以下ネタバレ。
裏表紙のあらすじでもちょっとネタバレしていますが。
確かにミオが死んでしまうというのはその後を考えれば導入部に当たるのでしょうけれも。私のようにあらすじを読まなかった幸運な読者はそれが明かされるシーンにもしっかり驚いたわけで。
それはともかくミオの不死設定が出た瞬間に正直ちょっとひいてしまった。ベタなネタ使いやがって…、と。しかし最後まで読んでみれば、その設定はおまけであることが解ります。「自分が自分でないかもしれない」というミオの悩み事態は割と普遍的なものだし、それに対するカズヤの解答も当たり前ながら小説としては目新しかった気がします。綺麗に終わってくれて満足満足。
それよりも共感できなかったのはカズヤの違和感の正体のほうかも。似たような気持ちは分かるだけに、なんであんな陳腐な解釈にしたんだか。

「お前はとにかく冷静すぎたってことなのだろうね。我を忘れるという経験が、これまで覚えている限りでんかったのだろう。だから、“感情”を理解できなくて、“理性”とは違うところから来るその衝動に疑問を抱いてしまった」

どうも物語の最初に感じていた違和感とは違うような気がするのだけれど。
殆どこの点だけが気になりました。