バルビザンデの宝冠 王の星を戴冠せよ / ミゼリコルドの聖杖 永遠はわが王のために

個人的に高殿ブームな日々です今日和。
本書は2冊で1つの作品、高殿円のデビュー作の前面改稿版になのだそうで。
2冊で前後篇だというのにタイトルが違うのってどうなんでしょう。
こういう本が検索性も低下するので売上も低下する気がするんですが……。
あと、図書館の敵になるんじゃないかと思います。


それはさておき、中身の紹介。
一種の貴種流離譚風ラヴストーリィ。舞台は割とよくある中世風異世界
パルメニアの若き王アルフォンスは王宮での息苦しい生活をぬけだすため、町で出会った瓜二つの少年キースと入れ替わってはたびたび町で遊んでいた。しかしアルフォンスの不甲斐なさに立腹したキースは愛国心から玉座を乗っ取ってしまう。アルフォンスはスラム街の反貴族レジスタンスに拾われて、国民の実態を知り、生来の頭の良さ故に気がつけばレジスタンスのリーダになってしまう。


というのが一応のあらすじですが、アルフォンスが一番気にしているのは、教育係兼側近ののマウリシオさんが、入れ替わりに気づいてくれなかったことだったり。BL臭がぷんぷんです。でもBLじゃなかったんですけどね。


貴種流離譚の典型に漏れず、アルは非凡な才能を見せつけます。
王宮では腐らせていましたが、スラムで生活を始めてからは店の売り上げを上昇させたり、城を攻めたりと大活躍。
遺伝子至上主義とか言ってはいけない


特にキャラ萌えとかはないのですが、普通に面白かったです。マウリシオの外道っぷりとかね。でもちゃんと最後に上手く伏線が回収されてッピーエンド、というのが良かったんだと思います。
ちょっと強引だった気もするけど、ミステリっぽいところも好き。


スピンオフな話をすると、作中で言及されるメリルローズというのはプリンセスハーツに出てくるジルのことで、今作のほうが時系列的にずっと後の物語になります。


ああ、それにしても書きにくい。
……ネタバレなしじゃ面白さを語れない自分に絶望した!
絶望したので以下ネタバレ。

これは要するにマウリシオとアルによる遠回りなラブコメなんだと思います。アルはヘスペリアンという突然変異型超能力者(早い話が無性体)であり、王宮でアルが肩身の狭い思いをしていたのも、王であるのに跡継ぎを作れないことに負い目を感じていたのが主な原因だったり。性別がないからBLじゃないんだよ!
そして後半で出血イベントが発生した以上、結末は推して知るべし。


もう1つのポイントはキースが身代わりなりに頑張った結果、騎士団を従わせるために引き抜いてしまった聖剣エヴァリオット。
アルじゃなくてキースが、というのは面白い展開だと思う。ついでにラストのアルの台詞に不覚にも萌えてしまった。

「……持っていると四六時中、小さな女の子のキンキン声が聞こえるんだよ。あたしのキースはどうした、あたしのキースを返せ、とうるさいのなんので」

剣の精霊さんですね。この科白内にしか登場していないにも関わらず、なんという破壊力。


あと、「聖剣が抜かれた代の騎士団は非常に独身率が高い」なんて小ネタを挟んでくれる作者が好きです。