魔女ルミカの赤い糸
電波系というのはホラーに通じるところがあるような気もする。
少年が魔女の美少女*1ルミカに突然襲われる話。
登校中にいきなりタックルして転ばせたあげく背中を踏みつけてくるような出逢いは斬新かもしれないが。おまけに
「わたくしを愛してくださる人に、ようやく巡りあえたのです!」
って貴女、何処のお花畑の住人ですか。
最初は電波かと思っていたのだけれど、徐々に物語はホラーでサディスティックでエロティックな方向へ。主人公の少年に仕事を押しつけて帰ったクラスメイトを縛り付けて監禁とか、割と真っ当に怖い。
それでも同情から手を差しのべてしまうあたりが少年の運のつき。いつの間にか夢中になってしまうのでした。……というよりいきなりルミカに陶酔しているので洗脳されてるだけなのかも。それはそれでアリだけれども。
ところで裏表紙に「ゴシックホラー風エロチックラブコメ」と紹介されているけれど「エロティック」のほうが似合ってるような気がする。
「上手でしたわ……先輩……。ごほうびをあげますね」
「こちらの足にも、口づけをしていいですわ」
設定や小道具の雰囲気は良い。赤い糸で縛るシーンとか。惜しむらくは科白まわしと描写力、そしてルミカ以外のキャラ達(特に主人公)がステレオタイプなこと。そのせいで展開も陳腐に映ってしまう(特に終盤)。というか、話の流れ自体は割と普通なので、人に薦めにくい。纏まっていると言えば、そうだけれど。
以下、ネタバレだったりする感想。
ちなみにクラスメイトが襲われたりするのは序の口で、ルミカに情を移してからが本番。とある事情で魔女の体は首から下が実体ではなく、触覚と影を持っていないのだけれど「口付けにより自分の当該部位を彼女に奪われる」という呪術的な設定が素敵。つまり、ルミカの右腕にキスをすると主人公の右腕が触覚と影を失う。しかも実体譲渡の際に激痛と流血を伴う特典(?)つき。この辺がエロチックと紹介された所以。
それを踏まえて引用部を読むと、ルミカのサドっぷりの片鱗が見えるかも。ちなみにこのシーン、まだ中盤なのに、背景が解るともっと鬼畜に見えます。
- 作者: 田口一,カズオキ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2007/10
- メディア: 文庫
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*1:別に重言じゃないよ。念のため。