遠まわりする雛
古典部シリーズ第四作。ちなみに内容は短編集で、過去三作品の合間を縫って時系列順に収録。主題として恋愛のようなものが貫いている感じ。徐々に近づいていく距離。それにしても折木はともかく千反田が恋愛してるところなんて想像がつかないや。
米澤さんの作品では古典部よりも小市民のほうが圧倒的に面白いと思っていたのだけれど、この本を読むんで評価を改めた。小市民のほうが面白いのは確かだけれど、圧倒的ではなくなった感じ。
正直言うと、値段は据え置きで良いから文庫で出して欲しかった。このサイズだと、重い上に手に対して大きすぎる。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
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やるべきことなら手短に
やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければならないことなら手短に。
という文章もこれで何度目だろう?
そんな折木だが、好奇心旺盛なお嬢様・千反田が「わたし、気になります」と言えば、何故だか逆らえないのでした、というお話。古典部の基本ともいうべき構成。この話のおかげでシリーズ未読者に対してもいきなりお薦めできる仕様。
反面最初からの読者にして見ればちょっと退屈だったんじゃないか、と見せかけて別の話への伏線になっているところがにくい作り。
大罪を犯す
謎そのものはどうでも良い、というか、この話って、ちゃんと解かれてないよね……? 私の脳内補完が足りないの?
ダブルミーニングとでも言うのか、タイトルが二重三重に聞いてくるのって良いよね。奉太郎の大罪はともかく、千反田は一体なぜ怒ったのか。友人が言うには、シリーズを最初から読み直せば思い当たる節がある、とのこと。ちょっとなー。時間がなー。
正体見たり
これもまたタイトルがよくマッチしてて、良い。このそこはかとないダークな感じが良いのだよ。米澤さんらしい、という印象。
心あたりのある者は
千反田が折木の推理力を褒めるのに対し、折木が反論する。適当な謎を想定してみろ、そこに簡単に理屈をつけるなんてできないから、と。
この話あたりから千反田と折木の仲がかなり親密になっていってるような印象。
読んで誰もがこう思ったに違いない。
あれ、これなんて九マイル……?
あきましておめでとう
正月の初詣で納屋に閉じこめられてしまった千反田と折木。携帯電話はない。家の遣いできている千反田はあらぬ噂を立てられると困るために人に見られずに脱出したい。と、そんな状況から脱出しようと奮闘する話。
ここに来て千反田の天然っぷりが可愛く思えてくる。別に今までそんな風に読んだこと無かったのに。紐のシーンは壺にはまりました。
それにしても折角の千反田の着物なのに折木の語彙が少ないせいで表現できないとか、タイトルの洒落とか、いろんな意味で残念というかむしろネタな一話。
手作りチョコレート事件
トリックも何も、読者にしてみれば犯人は最初から明白だよな、という話。折木のような理詰めは補強材料にすぎない。そしてまた、伏線の回収にうならされる話。
こういう駆け引きみたいな表現で心を伝えられる人間なんて、滅多に出会えないと思う。そういうわけで、ここは罵倒しておくのが正しいのかもしれない。
「この幸せ者め!」
それにしてもゲームセンタのシーンはやけに熱が入っているような気が……?