くじびき勇者さま 1番札
積読書消化強化期間継続中。
この本の八割はメイベルと蘊蓄で出来ています。
ナンセンスドタバタファンタジィかと思っていたけれど、そんなことはなくて普通に楽しく蘊蓄三昧でした。驚かせてくれるような展開が無いのは残念だけれど。
くじびきによって修道女にされてしまったというメイベルが疫病を研究したりテロリストと戦ったりけが人の治療をしたりガスに変わる動力について政治家に解説したり、料理の腕を褒められたり、姫だっこされたり、ドーナツ運びの手段に悩んだり魔女っ子ステッキを断ったりする話です。
向学心の高いメイベルは見習い修道女にして宮廷料理人ながら博学で魔法まで使えるというマルチタレント。そんな彼女が疫病調査のために救世の勇者の従者にされるまでの経緯をまるまる一冊かけて記述した本で、連載漫画で言えばまさに第一話といった感じの内容。
強気な才媛は大好きなのでメイベルはかなり壺。ちょっぴり毒舌なの点も。
「あ、でもね。女の子にとっては苦労しても魔法を使う意味はあるのよ」
「この世には肥った魔法使いがいないからよ!!」
冒頭ですぐに積んでいたことを後悔するくらいに引き込まれた。さすが清水文化といったところか。世界設定がしっかり描写されている点は安心。清水文化作品の主人公の例に漏れずメイベルが読者への解説も兼ねていろいろ語りまくってくるおかげで割と早い段階で世界設定が伝わってくる手堅い作り。
ちなみに引用部は「魔法って体力を消耗する割には大して役に立たないんだな」という旨の指摘に対する返事。集中力精神力魔力なんてものを作り出さず、単純に体力というのは珍しいんじゃないだろうか。さらに細かいイメージが必要になるという設定があるので「女性は同時に複数の魔法を使うために特別な訓練が要らない」という設定も自然と発生するわけで。
とにかく舞台が解説されるだけで面白いのです。水力列車*1についてメイベルが蘊蓄語っているだけでも楽しい、というのは理系思考なのかな。一方で「解説しすぎ。少しは読者に頭を使わせろ」と思うことがないでもないけれど。
- 作者: 清水文化,牛木義隆
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2006/09/30
- メディア: 文庫
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*1:あとがきによれば実在するとのこと。