何度も同じ罠にかかるなんて馬鹿じゃあるまいし……。

私が初めて(比喩でなく)読了後に投げつけた本は「吸血鬼のおしごと」の最終巻だった。作家の名は鈴木鈴。静かに暮らしたい吸血鬼と事故で半吸血鬼になった少女と幽霊と猫が出てくる物語であった。
最初こそ日常シーンがあったものの、何故か毎回妖怪の類が現れては襲ってくるという筋書き。尤も、中盤からは日常シーンなんて殆どなく、ひたすら読者を鬱に誘う怒濤の展開。初期の日常コメディが物足りなかっただけに、事件が全部解決してちゃんとしたコメディに戻るのはいつかいつかと待ち続けてしまった私は……まぁ、その結果上述の行為を取ることになる。
何しろ舞台設定は割と良かったのだ。次の巻こそは面白くなるのではないか、という期待を裏切られ続けた私が馬鹿だったのはどうしようもないのだけれど。


しかしまぁ、人に指摘されて気付いたのだが、実は相当えげつない展開であり、残酷描写も素晴らしいものだったのである。最初のほのぼの展開がもっとちゃんとしていたなら、すぱっと諦めてその落差を楽しめた物を……と思うが売り払ってしまっては後の祭り。今読み直したならたぶんもっと楽しめるんじゃないかな。当時の私には単なるバッドエンドにしか見えなかったのだけれど、黒展開を楽しもうと思えば確かに楽しい作品だった筈。
ファンによれば、次に書いている別シリーズがいつ鬱黒展開に突入するか楽しみで(或いは怖くて)仕方がないらしい。


……で、そんな黒作家が先日「吸血鬼のひめごと」とかいう本を出しました。
ええ、続編です。検索してみるとなぜか発売前からアンサイクロペディアの項目が引っかかったのには笑ってしまった。

笑い3割、シリアス2割、ヒロイン4割、暴力1割を信条とする百合小説「サンダーガール」を間に挟んでの続編の執筆であり、本作の内容が穏便かつ平和的なものであるということも考えられるのだが、その可能性はだれも信じていない・・・。

前作の数少ない生き残りである半吸血鬼が主人公なのだが、作中でもかなりの拷問を食らったキャラクタだけに、やっぱり今回も酷い目に遭うんだろうなぁ。
というわけで、今作では素直に黒作家を楽しもうと思います。