不気味で素朴な囲われた世界

タイトルから推測できる通り、「君と僕の壊れた世界」の関連作品。
こちらにも病院坂が出てくるけれど、あちらのよりずっとおかしい。性格と言うよりも、設定が。
まぁ、この作者の書くことに整合性とか求めると疲れるだけなんだけどね。それでもトリックくらいはちゃんと書いて欲しかったなぁ。
キャラ的には斬新さを追求しすぎてちょっとやりすぎちゃった感じ。不夜子さんは嫌いじゃないけど、姉はうざいだけだろうに。そして前述したように病院坂迷路は理解不能。いや、言ってること事態は別に不思議じゃないんだけども。
インパクトもなく、オチも今一つ。刀語は掛け合いが割と面白いのでそれでも良いけれど、こちらは会話のノリも弱い。要するにかなり駄目駄目な感じ。

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

以下、ネタバレ。
というか、トリックに関しての愚痴。


時計の時刻に関してはちょっと厳しい気もするけれどまぁ良い。針が真下になるより先にロープが抜け落ちるような気もするけれど。それなら実際に事件の起こった時刻がずれるだけな気もするのでまぁ良し。


問題は「アリバイという概念が解らない」という点について。確かに中学生がそんな単語を知らない可能性は十分にある。しかし、概念がないこととそれを思いつかないこととは別である。あの犯人は殺人を犯すという時に自分が疑われる可能性に思い至らないほど馬鹿には見えない。ついでに言うと、屋上への道を知っていた数少ない人間である。それにも拘わらず、自分が疑われないための工夫を一切していない。一人暮らしという描写は無かったし、ついでに言えば家族は事件と帰宅時間を関連づけて考えなかったのだろうか?
深夜に抜け出したという可能性もなくはないが、被害者の外傷と、帰宅していない事実、および実際の犯行時の状況を考慮すれば、実際には犯人と被害者はずっと校内に隠れていたことになる。
さらに言えば、犯行時刻は深夜であり、容疑者は全員中学生。アリバイがないと言っていたが、家で寝ているならば家族が証人になるはず。完全とは言えないまでも、アリバイがないほうが不思議ではなかろうか。尤も、家族が寝静まってから抜け出すのが不可能な時間だとは言わないが。
いずれにせよ、アリバイという単語や概念は知らなくても、犯行時刻にどこにいたか、と言われてその意味が解らないほどの馬鹿には見えない、ということ。


ところで不夜子の能力を当てにするのなら、アリバイ云々じゃなくて「貴方は犯人ですか」くらいに直球で聞けば良かったのでは?
あと、弔士がどうして迷路の発言を読み取れるのか、というのがメイントリックかと思ってました。ちゃんと伏線回収しろよ!