カッティング 〜Case of Tomoe〜

前作のような超展開ではなかったけれど、十分楽しめました。簡単に言うとsneg中二病的な意味で)。いじめ→解決→ラブコメ→誘拐→奪還。でも後半は正直おまけのような気が。


ちょっと長めに粗筋。
わけあって叔父夫婦の元で育てられたケイイチロウは、幸せを感じられない、とのたまう主人公。自分には価値がない、と思いこんでいるため突然現れた妹のトモエに虐められてもそれを受け入れてしまう。

「……僕には、何の価値もない……(略)……だから人から好意を向けられた時ほど、気が滅入ることはなかった。だからむしろ、憎まれる方がよっぽどしっくりとくるんだ……(略)」

著者をして中二病と言わしめる主人公だけど、ただのMじゃないかと思った。
ところがちょっとした事件を切欠にトモエがバグる。

「だから私が、あなたを愛してあげる」
「あなたが幸福を幸福と感じられる様になったら、他人を正しく愛せるようになったら――その時こそ私は、あなたを正しく憎んであげる」

どう見てもツンデレ宣言です。本当に(ry それにしてもトモエさん、冷静で世慣れした性格そうだったから、てっきりやる事はやってるのかと……って、教室でハブられている人間が世慣れしているように見える君の目は何なのよ?
そして突然ラブコメモードが始まるのでちょっと吃驚。従妹が嫉妬したりといったお約束もあるけれど、あとは前作を読んでいれば割と予想のつく展開なので略。


前作も思ったけれど、下手にSFにしなくても良いと思うんだけどなぁ。尤も、それだと精彩を欠くのは事実。他の青春劇に埋もれてしまう。やはり、途中からSFになるのが悪いんだろうなぁ。
序でに気になるのは著者の操る奇妙な日本語。119頁のわざわざ探しに来たにショックだよな?なんてのは単なる誤植だろうけれど、117頁僕には君の心の内を分かっている事はできない。はなぁ……。どこか忘れたけど要領さも。ただし無慈悲な夜の女王という表現をいきなり出すのは読者の教養に挑戦しているようで割と好きだったりする。……ん? まさかこういう著者の独自言語を読者に教養しているあたりが中二病と言われる所以?!
前作ほどではないけれど、変な展開が好きな人には向いてるんじゃないかと。
それにしても主人公ラブな従妹の扱いがひどい。空気とは言わないまでも、欠片も振り向いて貰えないってのはどうなのよ。


個人的に一つ付け加えるなら、最後にケイイチロウをかばうのはトモエじゃないほうの人格で、その人格のまま黒幕を拒絶してくれれば面白かったんだけど。けどまぁ、どっちの人格でもケイイチロウを庇うのは物語的に当然なので、わざわざ書かなかったのかな。

カッティング ~Case of Tomoe~ (HJ文庫)

カッティング ~Case of Tomoe~ (HJ文庫)

ていうかトモエが巴のクローンなら、ケイイチロウと結ばれるのはまずいんでは……?