"文学少女"と神に臨む作家

函館行ってて読めなかったけど、ようやく読了。大好きだった"文学少女"シリーズも、これで完結。
すばらしい出来でした。展開的に望んでいた方向に行かなかったのは残念だけれども。


とりあえず流人に邪魔されるななせが不憫で不憫で…。
心葉が優柔不断なのも問題と言えなくもないけれど、でもいくら恋人との約束でも、大切な人の危機には勝てないって解ってあげてほしかった。
あの状況下じゃ、いくら情報源が流人とはいえ、心葉は信じるしかないんだって。
ななせが好きになったのは、そういう心葉の優しさだった筈なのに。
……とはいえ、それを差し引いても、心葉がふらついているように見えたんだろう。だからこその暫定絶交処置なわけで。


上巻で「天野遠子は消えてしまう」とか煽りまくっていたのは、誰からも認識されなくなるっていうオチかとも思っていたんだけれども、そういう方向には行かず、安心。
というかそもそも、叶子が無視するのは純粋に無視だったようなので、単なる私の勘違いらしい。
唯一*1のファンタジー要素が遠子先輩の存在なんだから、彼女自身の秘密を使ったトリックでも良かったんじゃないかと思うんだけれども、そういう風には行かないようで、あくまでもこのシリーズの本質は人間ドラマなのですね。


そしていつものように明かされる事故の真相とかその他いろいろ。
いつも通り芝居臭い謎解きシーンでは、案の定心葉が探偵役。
すべて明らかになってみれば、遠子先輩が心葉から離れようとするのも納得。
そして思う。説明不足のままに心葉を脅迫してきた流人はただの馬鹿なんじゃ?


あとは竹田さんがかなり正常化してて和んだ。「人は変われる」だなんて、この人から聞けるなんて、成長したもんだ。かと思えばヤンデレ属性は健在で、というか漸く本領発揮とでもいいますか、終盤は特にかっこ良い。


残念ながら麻貴さんの出番は少なめ。……にも関わらず、受けたインパクトは最大級なキャラでした。一体流人との間に何がおこってそうなったのかと気になってしまう。百歩譲って考えても、「そんな場所で?」と思ってしまったのは私だけじゃない筈。


そしてこれは本当にネタバレですが……。
結局ななせじゃないのか……と思うと残念至極。そりゃフラグ的に遠子先輩なのは解っていたけれども。そういった恋愛的なものは抜きにして、大切な関係ってのを体現して欲しかったんですけれども。

*1:どっかの通称天使もかなりファンタジーだが。