平井骸惚此中ニ有リ 其伍

4巻で終わりだと思っていたのにもう一冊あったのを最近発見して読んだ。ていうか出たの二年前じゃん。富士見ミステリー文庫の数少ないミステリです……あれ?
やっぱ大正は良いね。適度にハイカラさんなところとか、あと袴とか袴とか袴とか。適度に読みやすくされた講談調な語り口とかも良い感じ。強いて言えば、時代背景的に考えれば登場する女性が社交的なことに寛容な人が多すぎるような……主役勢を現代基準の善人にしてしまうとそうならざるを得ないんだけどね。
「真実を明かしたい」という誘惑を断ち切らんがために探偵役になりたくないという骸惚先生はどこか米澤穂信の<小市民>に通じるところがあるような気がする。そして堂々としていながらもここぞというところで妻と娘に甘いところがなんともニヤニヤな作品。
で、この巻は割とすぐにネタが解ってしまうのが残念な感じ。振り返ってみると、ミステリとして面白かったのは一巻と三巻ではないかな。四巻の場合は、ちょっと描写が雑で描きたい部分がピンぼけしている印象。……ていうかこの巻のこと全然褒めてないね。まあ、割と面白かったけれど、あまり目立ったとはない話。あ、でも緋音嬢が内面から描かれていて可愛かったり、太一と涼嬢が多少は進展していたあたりは良し。