あまがみエメンタール

ちなみに作者は昔、木ノ歌詠という名義で「幽霊列車とこんぺい糖」やら「熾天使たちの5分後」とか書いていた人です。個人的には幽霊列車を超える百合だと思います。

ここだけお話、莉子ちゃんは「あたし中毒」だ。
だけど−−
あたしもまた、「莉子ちゃん中毒」なのだ。

隠す気もないくらいに相互依存症な二人の少女、心音と莉子の関係を中心とした全寮制学園百合小説です。
最初こそ、莉子と心音の関係はテトとナウシカみたいなものから始まります。母親と離されて暴れる莉子(小一)に全力で噛みつかれる心音(同じく小一)さんは、親指から血を垂らしながら*1思うのでした。

−−ああ、こんなあたしでも必要とされているんだなあ……。

とても小一の子の持つ感想には思えないとかそういうことは置いといて。なんだかなだで莉子に懐かれてしまった心音は今日も、今日とて腕とか足とか○とか○とか莉子に差し出し、噛み跡をこっそり写してアルバムの肥やしにするのでした……というお話です。
なんというか……そのままの意味で「痛い」作品でした。
百合としてどうこうというより、とにかく読んでて痛かったです。印象に残る、ってことは良い作品でした。
一つだけ残念なことを挙げるとすれば、エピローグは無くても良かったんじゃないかということです。そうすればもっと絶賛されたでしょうに……。*2


以下ネタバレ。
そして噛まれる場所がエスカレートしていけば、当然のごとくラノベ的にはお色気シーンになってしまうわけです。が、ちゃんとそのシーンに重要な意味があるため、素直に読めるのが素晴らしい。
どういうことかと言えば、一つ屋根の下で暮らしたら何故かお風呂でばったりとか、ヒロインが巨乳だとかみたいなお約束は、露骨すぎてちょっと残念な気になるわけです。そんなシーンや設定、必要ないでしょ、と。上条当麻の右手でインデックスの服の結界が無効化されたとしても、生地が破ける必要は無いでしょ、と。
でもこの作品の場合、二人は少女でなければならなかったし、心音は巨乳でなければならなかったし、莉子は幼児体型でなければならなかった。そういった設定をギャグとして伏線にしてしまう作品なら数多ありますが、物語の芯に必要な素材として持ってくるあたり、作者は真の変態素晴らしい作家だな、と思うわけです。


ちなみにタイトルに関してですが、最後まで読んだ結果、「ああ、最後以外はあまがみだったんだなぁ」って納得しました。
ていうかあのタイトルで、誰が血塗れのヒロインを予想できよう。

*1:はいここ、「どこがあまがみやねん」って思うとこです

*2:まあ、それ以上に非難の嵐でしょうけれど。